予納金(民事再生)

予納金とは、予め納めるお金、です。裁判所に納付します。

東京地裁では、金額テーブルが決められていますが、事案によって異なる場合もたまにあります。
例えば、債権額は多くないけれど債権者が数万人とか、手続負担が多い場合には標準よりも高くなる場合があります。

予納金の額は各地方裁判所によって異なりますが、概ね東京地裁に似ていると思います。
高松地裁はWEBで公開しています。

以下は東京地裁(R4.3時点) 予納金に消費税はかかりません。
負債総額予納金額
5千万円未満200万円
5千万円~1億円未満300万円
1億円~5億円未満400万円
5億円~10億円未満500万円
10億円~50億円未満600万円
50億円~100億円未満700万円
100億円~250億円未満900万円
250億円~500億円未満1000万円
500億円~1000億円未満1200万円
1000億円以上1300万円
  • 関連会社は原則1社50万円ですが、規模によって増額する可能性があります。
  • 会社代表者も民事再生を申し立てる場合は、原則25万円(ただし会社の債権者集会を超えると増額)
  • 上記はあくまでも会社・法人の場合であり、個人民事再生は異なります(もっと安いです)。
  • 上記は裁判所に払う予納金だけの金額です。会社で依頼する申立代理人弁護士、会計士については別途、直接支払う必要があります。
これらの予納金は、以下の用途で使われます。
    • 監督委員の報酬
    • 監督委員補助者公認会計士の報酬
    • 裁判所から送付する書面の郵送料、登記料など

会社更生手続きと民事再生手続きの違い

会社更生手続と民事再生手続の主な違いは以下の通りです。

担保権者、優先債権者(租税債権等)の手続取り込みとスピード感

取り込む債権者の種類の違い

民事再生法では、担保権者は別除権者と呼ばれ、民事再生手続とは「別」に「除」かれた「者」として、再生手続が開始していても、その権利を行使することができます。

つまり、担保権を設定している債権者は、その担保権の時価までの回収は約束されていることとなります。(実際には、いろいろ交渉はしますが、法的な権利として妨げられない、ということです。)

税金も、再生手続とは別に行使可能であり、カット対象になりません。
労働債権、いわゆる未払給与*1、退職金もカット対象になりません。

一方で会社更生法では、担保権者も優先債権者も手続に取り込みます。
会社更生手続が開始されれば、担保権者も個別の権利行使ができなくなり、更生計画の中で弁済を受けることとなります。他の一般債権者グループと分けられ、担保権者グループの中で、担保権者が議決権を行使します。一般債権者ほどカットはされないにしても、民事再生手続よりは回収が少なくなるのが一般的です。

税金、社会保険料も、理論的にはカット可能ですが、一般的にはカット対象とはならないことが多いです。ただし、個別の権利行使をストップさせれるので、更生手続中は、滞納処分と呼ばれる、強制的な回収行動が制限されます。

従業員の未払給与、一般債権ほどではないにせよ、退職金もカット対象になりえます。

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倒産手続選択も経営判断

民事再生、会社更生、破産、私的整理、ADR。。。。

いわゆる倒産手続にも様々種類があります。
精通した法律家、公認会計士に相談しよう、それはもちろん大事です。

しかし、この手続選択は、これがベスト!これ以外ない!、ということはなく、それぞれ、メリットデメリットがあるもので、価値観によって選択肢は変わってきます。

倒産手続選択はビジネスジャッジであり、法的判断ではないのです。

例えばですが、(状況によってメリットデメリットが反対になることもあります)

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私的整理と法的整理

私的整理と法的整理の大きな違い
  1. 法的整理は取引債権者を巻き込むが、私的整理は原則金融機関のみ
  2. 法的整理は多数決原理であるが、私的整理は全員賛成
どちらも一長一短あるものです。

私的整理しか経験のないプロが法的整理で迷うのが、取引債権者も巻き込んでしまうことでしょう。

「取引債権者を引っかけておいて事業継続できるのか」

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民事再生を適用できる組織

会社更生手続は株式会社しか利用できません。
保険会社などは特別法がありますが、これも株式会社か相互会社です。

民事再生手続の幅は広く、個人、法人(株式会社、有限会社、社団法人、財団法人、公益法人、組合、特殊組合、その他)などなど、相続財産以外に適用が可能です。外国会社の支店なども利用できます。

漁業組合でも、農業組合でも、特殊な法人でも大丈夫と解されています。

規模も大規模な法人から個人事業主まで、どんな規模でも大丈夫です。

地場の組合など、債務超過で困っていることはありませんか?
一度専門家に相談されるといいと思います。

資金繰りがみえてますか?

会社から相談があったら、プロの先生方は「資金繰り計画を作っていますか?毎日の日繰りで作成していますか?」と経営者に質問することでしょう。

日繰りでの資金繰り計画を作成していたとしても、それが本当に信頼できるものか、どのように判断してらっしゃいますでしょうか。

はまるポイントは主に以下の点ではないでしょうか。

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民事再生における事業譲渡

スポンサーに対して事業を譲渡するスキームとしては、以下のような形がありえます。
  1. 再生計画の中で実施
    1. 株式を減増資してスポンサーに株式を割り当て。スポンサーが会社に融資。
    2. 会社分割してスポンサー企業に譲渡
      1. 株式の行方はともかく、スポンサーが会社に融資
      2. (その他もありえます)
  • 再生計画(案)の決議を待たずに譲渡(計画外譲渡と呼ばれます)
    • 早期に事業譲渡
    • 早期に会社分割(事業譲渡より時間がかかります)
ここでは、事業の計画外譲渡について取り上げます。

再生計画(案)の決議をする債権者集会まで、通常5ヶ月かかります(東京地裁標準スケジュール)。
ところが、民事再生手続を申し立てると、取引先の信用不安から取引が円滑に進まず、事業価値の棄損が激しいことがあります。また、棄損の程度は低くても、資金が持たず、民事再生手続を継続できなくなる可能性もよくあるところです。

このような場合、早期にスポンサーに事業譲渡することで事業価値の劣化を防ぎ、再生手続の完遂を目指すことができます。

いくつか要件はありますが、申立から最短1ヶ月~3ヶ月の間で事業譲渡する例が多いです。
(といっても、最短の1ヶ月はかなり珍しく、2ヶ月程度が多いと思います。)

スポンサーにとっても事業価値が劣化して使い物になるうちに事業を譲り受けることができますし、債権者にとっても、より高い金額で譲渡できたほうが弁済率が高くなるので、経済的にはwin-winと言えます。

しかし、このスピード感で、債権者・監督委員が納得しうるスポンサー選定をし、適切な財産評定をするのは、かなり手慣れた公認会計士がいないと難しいでしょう。
なので、相談する専門家は、再生手続に慣れている人を選びましょう。