会社更生手続きと民事再生手続きの違い

会社更生手続と民事再生手続の主な違いは以下の通りです。

担保権者、優先債権者(租税債権等)の手続取り込みとスピード感

取り込む債権者の種類の違い

民事再生法では、担保権者は別除権者と呼ばれ、民事再生手続とは「別」に「除」かれた「者」として、再生手続が開始していても、その権利を行使することができます。

つまり、担保権を設定している債権者は、その担保権の時価までの回収は約束されていることとなります。(実際には、いろいろ交渉はしますが、法的な権利として妨げられない、ということです。)

税金も、再生手続とは別に行使可能であり、カット対象になりません。
労働債権、いわゆる未払給与*1、退職金もカット対象になりません。

一方で会社更生法では、担保権者も優先債権者も手続に取り込みます。
会社更生手続が開始されれば、担保権者も個別の権利行使ができなくなり、更生計画の中で弁済を受けることとなります。他の一般債権者グループと分けられ、担保権者グループの中で、担保権者が議決権を行使します。一般債権者ほどカットはされないにしても、民事再生手続よりは回収が少なくなるのが一般的です。

税金、社会保険料も、理論的にはカット可能ですが、一般的にはカット対象とはならないことが多いです。ただし、個別の権利行使をストップさせれるので、更生手続中は、滞納処分と呼ばれる、強制的な回収行動が制限されます。

従業員の未払給与、一般債権ほどではないにせよ、退職金もカット対象になりえます。

スピード感

民事再生手続は、申立から計画案の認可まで早ければ5ヶ月、会社更生手続は1年程度かかるのが通常です*2

担保権者などを拘束することができる会社更生法は便利なようにみえますが、それだけ「重い」手続であり、時間がかかります。

民事再生法は、それに比べれば軽い手続であり、スピード感もって手続を進められるメリットがあります。

*1 : 通常の給与は通常通り払われます。この未払給与の意味は、本来の支給日を超えて払われていないものです。

*2 : 計画案認可までのスピードであり、弁済を含めれば、双方とももっと長くなります。

経営者がそのまま経営するかどうか

破綻企業の経営を、そのまま従前の経営者が取り仕切ることを、DIP型(Debtor In Position)といいます。
一方で、従前の経営者は退き、管財人と呼ばれる、裁判所から選任された人が経営を取り仕切る管理型、と呼ばれる方式があります。

民事再生手続は、原則DIP型。例外として管理型。
会社更生手続は、原則管理型、それなりにDIP型もある。

ということになっています。

どちらもDIP型、管理型がありえるわけですが、原則が上記のとおりなので、法律の根本が異なり、実務の末節で、いろいろと使い勝手が違います。

裁判所の管理

これは東京地裁での一般論ですが、民事再生手続のほうが会社の自主性に任せられており、会社更生手続は、裁判所の管理がきつい印象*3があります(印象です)。

*3 : 2022後半より会社更生手続の管轄が東京地裁内で変更がありますので、今後の運用状況には要注意です。

どちらを選べばいいのか

民事再生法も会社更生法も、一長一短あり、状況に応じて判断すべきものです。
専門家によく相談をしましょう。