破産前事業譲渡
2022/03/17 16:32
ここでは、民事再生から離れて、破産手続申立前の事業譲渡についての話です。
多額の公租公課債権があること等で、事業継続型の手続を選択できない場合、破産前に事業譲渡をして事業を生かす方法があります。
昨今の新型コロナ融資や税金等の納付特例などで多額の公租公課を滞納している会社が多く、今後、破産前事業譲渡は増加していくかも知れません。
プロなら当然、破産前事業譲渡は、詐害行為(否認行為)に当たるのではないかと思われるでしょう。
それは、譲渡価格次第。
適切な譲渡対価であれば、相当対価での譲渡であり、かなりのリスクを抑えられます。
(リスクをゼロにはできなくても、十分にテイクできる程度にはできます)
相当対価でない場合、詐害行為リスクはもちろん、破産財団が低廉譲渡による第二次納税義務を負う可能性もあります。
ポイント
- 適切な譲渡対価を算定しておく
- 経営者の親族など利害関係者ではなく、利害関係のないスポンサーに売却する
- 受け取った譲渡対価は、費消せずに管財人に引き継ぐ
- 譲渡後、(状況に応じてであるが)可及的速やかに破産申立をする
2の譲渡先についてですが、譲渡先が利害関係者であると、例え譲渡価格が適切であっても、他の債権者、破産裁判所から、「何かおかしい」と言われるリスクが、かなり高まります。
事業価値は、かなり幅のある概念ですから、よほど十分な高価格か、相当対価を十分に疎明できるものでないと債権者らを納得させるのは、難しいものと思います。
スポンサー選定も、可能な範囲で、広く探すことも肝要です(もっとも現実では、引き取ってくれるスポンサーが特定社しかない、という状況も多いです)。
3については、異論のある方もいるかも知れませんが、相当対価の事業譲渡であっても、受け取った金員を不正な目的に費消してしまうと、否認該当行為となってしまいます(破産法161条)。
そのリスクを抑え、破産財団の活動に十分な財源を残しておくことで、否認リスクを下げることができるものと考えられます。
4については、透明性を保ち、また管財人に税金還付等がなるべく有利に受けられるよう早めのバトンタッチが総合的なリスクを下げるものということです。
いずれも、これがあれば完璧!というものはなく、それぞれの要素の合わせ技で詐害・否認リスクを下げていくのがプロのお仕事と思います。