評価方法その2

2022/03/25 14:57

民再生法上の財産評定の評価方法その2

売掛金

ここは公認会計士であっても、はじめて財産評定する時には誤ったり、迷う部分があるところです。

「売掛金は法的に確定した債権*1だから、原則として100%入金されるよね」と考えがちですが、これは間違っています。

破産管財の実務に携われば理解できることですが、売掛金が100%回収できることはむしろ希です。
多くの会社が、以下の理由で支払を拒むか、減額要求してきます。
  1. 買った製品のアフターサービスがないのだから、従前の価格で買えるわけない。減額する。
  2. 今後の製品供給がないのであるから、うちのクライアントにも迷惑がかかる。代替品をみつけるまでの損失分を減額する(継続的供給義務違反)。
  3. そっち(再生会社)が倒産したおかげで、部品調達が滞り、追加コストがかかったから減額する
  4. 同上理由で、こちらのクライアントへの納期が遅れ、損害がでたのでその分減額する
  5. 他にも様々な理由が考えられます。
これらは、"法的には通用しない理屈"であっても、主張されることが多いです。
そして、法的には通用しない理屈でも経済的に通用する理屈であれば、破産管財人としては折れざるを得ない局面がよくあります。(特に破産手続における相殺主張には一定の制限があるにもかかわらず、法的に無理筋の相殺をしてくる先もあります。)

もちろん、管財人がそのような主張を突っぱねて回収を図ることも、もちろんありますが、それには訴訟の手間暇も時間もかかり、早期に解決したほうが、破産債権者全体のためには合理的なこともあります。

破産管財人としては、ガチで争うよりは、法的にはともかく経済的には一理あるのだから、一定程度の減額に応じて、早期回収したほうがよい、という判断が実務ではよく見られるところです*2

法的な権利はともかく、実際の回収現場でそうなっている以上、それを斟酌して評価します。

一般的には3割減までは、許容されるレベルです。

ただし誤解していただきたくないのは、それぞれの会社には固有の状況があるので、それらは十分に検討しないといけないということです。

例えば、破産となっても、売掛先がきちんと払ってくれるような先、例えば、一般小売りの場合のクレジット-カード会社などは、手数料は差し引かれるものの、ほぼ100%入ってくることもあります*3

結果的に、売掛金の評価が、30%~70%程度になることは、珍しくありません。

これは、破産となった場合のシミュレーションですから、より説得的な理由付けをすることが大事です。
粉飾決算の結果として売掛金
財産評定を実施する時に、過去の粉飾決算として残っていた売掛金の処理に迷うこともありますが、原則として、再生手続帳簿の段階ですべて修正しておき、帳簿上は架空の売掛金はないようにすることが多いです。
回収可能額が明らかな売掛金
実在はするけれど、回収可能性が低く、それが合理的に見積もれるものは、当該見積額とします。
帳簿上は計上しておき、評価で下げることととなります。

売掛先が破産などしてれば、一応当該管財人に問い合わせるなどして状況を確認することもありますし、長期間未収で会社と連絡が取れないような場合はゼロ評価とします*4

評価方法その3に続く

*1 : 再生会社がもらう方向での債権の意味

*2 : だからとしって逆の立場になった時、無理な減額要求をしてはいけません

*3 : だからといって、クレジットカード会社であれば100%入ってくるということでもありません。自社製品であれば、購入した一般消費者が支払の抗弁を主張した時、クレジットカード会社は支払を止める、減額する可能性は十分にあります。

*4 : 税務上の貸倒の要件とは異なりますから注意しましょう